「太宰治」

那珂太郎の「太宰治」

那珂太郎「池畔遠望」(『空我山房日乘其他』青土社1985年) 同極月某日、天氣晴朗ナレドモ風ヤヤ強シ庵ヲ出デ北西ニ行クコト十餘町ニシテ三鷹臺更ニ十餘町ススメバ井ノ頭ノ池二至ル木立ミナ枯葉ヲ落シスルドキ梢虛空ヲ刺セリ水上ニ扁舟ヲ泛ブルモノ三五櫂聲…

新資料 太宰治の手紙──佐藤さん、私を忘れないで下さい

太宰治書簡佐藤春夫宛1936年1月28日(封筒欠 毛筆 巻紙[18.8cm×404.0cm]) 謹啓 いまにいたつて、どのやうな手紙さしあげても、なるやうにしかならないのだと存じ、あきらめてじつとして居りましたが、どうにも苦しく、不安でなりませぬゆゑ、最後のお願ひ…

藤田田の「太宰治」

「藤田田物語」(日本マクドナルド株式会社広報部編『日本マクドナルド20年のあゆみ 優勝劣敗』pp.124-125) 東大在学中に藤田は、戦後史を彩った人物たちと付き合っている。「光クラブ事件」で有名な山崎晃嗣や、流行作家の太宰治らである。 〔…〕 このころ…

太宰治の妻、遺産9億円

朝日新聞1998年1月8日夕刊 太宰治の妻、遺産9億円 作家太宰治の妻で昨年二月、八十五歳で死去した津島美知子さんの課税遺産額が約九億四千万円であることが八日、東京・本郷税務署の公示でわかった。 関係者によると、遺産は東京都文京区の自宅の敷地や預貯…

週刊誌メモ

『週刊新潮』3月27日号「へそまがり世間論」第586回/「「醜態」元総理と「明治の総理」を比較する」 『週刊文春』3月27日号「文庫本を狙え!」(794)/鬼海弘雄『世間のひと』(ちくま文庫) 『週刊ポスト』4月4・11日号「この人に訊け!」/坪内祐三「種…

「新年インタビュー◉安岡章太郎 文壇の効用その他」(『文學界』2001年1月号)

■太宰は東大仏文がまずかった ──きょうは、何かのテーマをかまえてお話をうかがうというのではなく、昔の文壇のこと、安岡さんがお会いになったいろんな作家たちのことなどをざっくばらんにお話しいただければと思います。 安岡 突然のようだけれど、太宰治…

山口健二の「太宰治」

山口健二『戦後革命無宿 聞き書き*山口健二という生き方』(私家版,2000年)の「2 一高から京大へ」から(pp.9-10)。 それでたまたまだけど、太宰治がぜんぜん有名じゃなかったころ、まだ戦争中で、とにかく本屋行っても新刊書なんてあまり出ていなくて、…

忘れ得ぬ人びと/小山清

栗原幸夫「忘れ得ぬ人びと 小山清」(『わが先行者たち 文学的肖像』〔水声社〕pp.363-4) 作家の小山清さんが亡くなった。長いこと失語症で、作品も見ることができなかったけれど、ああいう作家が、この国のどこかに、ひっそりと生きていると考えるだけで、…

太宰治『晩年』識語について

山内祥史「解題」(『太宰治全集第一巻』〔筑摩書房/一九八九年六月十九日初版第一刷発行〕pp.490-491)*1 「六月廿日」に納本されると、太宰治は、山崎剛平からの電報で砂子屋書房に駈けつけ、奥付に直接検印を捺していったあと、献呈用の『晩年』を持って…

大西巨人の「太宰治」

「十五年間」について▶『文化展望』1946年5月号所載のエッセイ「小説展望」*1に以下の記述がある。 太宰治『十五年間』敗戰以來目にふれた作品の中で、殆ど唯一の『過去への反逆』の無い作品。保身の術を蔑視することの不賢明さと崇さと示してゐる好例。ただ…

中井英夫の「太宰治」

「続・黒鳥館戦後日記」(『中井英夫全集―8』) *1五月十七日(月) 〔…〕 昨日朝、太宰さんの家へゆく。奥さんが出掛けて、ひとりで子供の番をしてゐた。床もあげてないけどまあ上れといふので一時間ほど話をした。創刊号の扱ひ方をぷん/\むくれて具合わる…

業田良家の「太宰治」

「私の読書遍歴 第五回 業田良家」(『文學界』2003年11月号) ―活字の本を読むよになったのはいつ頃からですか。 G 高校生ですね。太宰治の『人間失格』を読んで衝撃を受けました。「道化」という言葉に共感した。自分も道化じゃないかと思ったんです。そ…

マサオ・ミヨシの「太宰治」

マサオ・ミヨシ+吉本光宏『抵抗の場へ──あらゆる境界を越えるために マサオ・ミヨシ自らを語る』(洛北出版、pp.102-3) 吉本 あなたは社会で起こっていることから距離を置いていました。戦後日本文学にも熱狂はしなかったのですか。 ミヨシ 友人の間で話題…

殿山泰司の「太宰治」

殿山泰司『三文役者あなあきい伝 PART 2』(ちくま文庫, pp.66-67) 興亜映画の仲間でもあった俳優座の楠田薫が、新橋のおれんとこへあそびにきて、「あのね、太宰さんが、こんなとこ、とても好きなのよ」と言ったんだ。「太宰さん? 太宰さんて、太宰さんて…

本間久雄と太宰治

坪内祐三の「この特別資料室の書庫に私は籠っていたい」という題の一文は、早稲田大学中央図書館特別資料室の所蔵品を見せてもらいに出向いたことを記したものであるが、その文中にこういう記述がある。 特別資料室の明治期の資料の中心をなすのは「本間久雄…

シラー作「人質」

小栗孝則譯『新編シラー詩抄』(改造文庫、昭和十二年七月十六日印刷/昭和十二年七月二十日發行) 人質 譚詩 暴君ディオニスのところにメロスは短劍をふところにして忍びよつた警吏は彼を捕縛した「この短劍でなにをするつもりか? 言へ!」險惡な顔をして…