2012-03-24 福田和也の〝九〇年代の「収穫」〟 俗生亭 「あとがきにかえて──現代日本文学と「すでにそこにあるもの」」*1 九〇年代の日本文学の総括をしてほしいという要請で、この文章を書いているのだが、まず手がかりとして九〇年代の「収穫」と私が思う小説、批評の作品を挙げてみたい。〔…〕「収穫」と云うのは、私が九〇年代に刺戟を受けたのみならず──それはそのまま私の職業的著者としての活動期間に重なっている──これまでに何回も読み返し、これからも読み続けていくであろう作品を選んだということである。 【小説】 石原慎太郎『わが人生の時の時』(文藝春秋、96点*2) 古井由吉『仮往生伝試文』(河出書房新社、96点) 大江健三郎『宙返り』(講談社文庫、64点) 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』(新潮文庫、96点) 奥泉光『バナールな現象』(集英社文庫、81点) 保坂和志『季節の記憶』(中公文庫、86点) 佐伯一麦『木の一族』(新潮文庫、91点) 町田康『くっすん大黒』(文春文庫、88点) 田口賢司『ラヴリィ』(新潮社) 阿部和重『インディヴィジュアル・プロジェクション』(講談社文庫、76点) 【批評】 小島信夫『原石鼎』(水声社) 桶谷秀昭『昭和精神史』(文春文庫) 柄谷行人『坂口安吾と中上健次』(講談社文芸文庫) 絓秀実『詩的モダニティの舞台』(論創社) 椹木野衣『日本・現代・美術』(新潮社) 山城むつみ『文学のプログラム』(講談社文芸文庫) *1:『文學界』1999年12月号/『現代文学』(文藝春秋、2003)所収。福田は『ZYAPAИORAMA:大竹伸朗日本景』に刺戟されたという。「すでにそこにあるもの」は大竹の文集『既にそこにあるもの』からだろう。『現代文学』の装画も大竹。 *2:丸括弧内の点数は『作家の値うち』から。田口賢司は採り挙げられていない。