「そもそもエッセイとは、・・・」

林真理子坪内祐三マリコのゲストコレクション 769」*1

 ほんとにセレブですね。講談社エッセイ賞の選考会のときに、坪内さんが「エッセーというのは、僕とか酒井順子さんのような中流の者が書くものだよ」と言ったの、私、覚えてますよ。
坪内 うそ。そんなこと言ってないでしょう。
 言いましたよォー。
坪内 僕は自分のこと中流だとも上流とも下層とも思ってないの。うちの父親の教育方針で小学校、中学校は地元の公立だし。親父も、親父の親父も東大法学部だから、「おまえも東大に行け」と言われてたんだけど、「塾は行くな」と言われて行かなかった。だから僕は小学校のとき、東大って簡単に入れると思ってたわけ(笑)。勉強ダメだったのに。

坪内祐三「名エッセイストの父親たち」*2

 エッセイというと最近ではタレントにちょっと毛のはえた連中の得意とする文芸ジャンルになってしまったが、そもそもエッセイとは、言葉の本来的な意味において、もっともタレント(才能)を要求される文芸ジャンルである。そして残酷で差別的な言い方をすれば、その種の才能は、一代だけで生まれるものではない。別にDNAがどうのこうのと言う訳ではなく、ある種の環境が、その種の才能を生み出すのである。
 〔…〕
 それから、金持ちの御曹司の方が、貧乏な家の子より、エッセイストになるには適している。串田孫一團伊玖磨といえば当代を代表する二大エッセイストであるが、串田は三菱の大番頭串田萬蔵の息子、團は三井の大番頭團琢磨の孫で、伊玖磨の父團伊能も有力な実業家だった。

*1:週刊朝日」15.6.19

*2:ノーサイド」94.8