「神聖喜劇 ふたたび」の過誤

4月13日にNHK教育で放送されたETV特集神聖喜劇 ふたたび〜作家 大西巨人の闘い〜」は、大西巨人さんの肉声が聞け、動画を視られるという点で有難いが、番組の出来自体は取るに足らないもののように思われた。
しかし、問題は別のところにある。この番組は「今年三月、一人の老作家が、自らの原点となる地を歩いた。大西巨人、九十一歳」*1という長谷川勝彦の語りで始まるのだが、ここでまず、おやと思わざるを得ない。大西氏は1919年8月生れであり、満年齢で88歳のはずだからである。仮に数え年であったとしても90歳のはずである。出だしから躓いているのだ。
更に決定的なのは「大西巨人は一九一六年、大正五年、福岡市に生れた」*2という語りに至った時である。制作者が生年を取り違えていることを納得させられる。これに輪を掛けてNHKのHPの番組表における番組内容と詳細に「91歳で現役の作家大西」「91歳でなお創作意欲の衰えない大西」と記され、ETV特集の番組HPに「大西は現在91歳」と記される始末である。
制作者(取材・釜口佳人、ディレクター・渡辺考、制作統括・塩田純など)の誰かが、おそらく1919年を1916年と見間違えたのであろう。そして1916年と思い込んだまま、大正5年、91歳と計算して、台本を書いてしまったのであろう。そしてその過誤に放送するまで誰一人気付かなかったようなのである。
大西氏に思い入れがあったからこそ、この1時間半にも及ぶ特集を制作しようと思い立ったはずであるが、このような初歩的であり、且つ決定的な情報に過誤があるというのは制作環境が余程がさつさなのであろうと推察されるが、細部に至るまで徹底して正確を期す文業を続けてきた大西氏が取材対象である分だけ、余計に、このような制作側の出鱈目さが際立ち、無様である。何はともあれ大西氏に失礼極まりない。


放送日時

初回放送······2008年4月13日(日)午後10:00〜11:30
アンコール······2008年8月10日(日)午後10:00〜11:30
Eテレセレクション······2014年4月13日(日)午前0:00〜1:30


エンディングクレジット

出演
西島秀俊
伊藤淳史
吉見一豊
荒川大三郎 大窪晶 山口太郎 茶花健太
塩見三省


語り 長谷川勝彦


資料提供
帝国書院 光文社 幻冬舎
ミステリー文学資料館 米国立公文書館


取材協力
針生一郎 窪田清 濱井武 矢野到
小松津代志 大高知児 長町忠一 大東信祐
森喜行 明石良 明治村 九州大学 癌研有明病院


撮影 平田友行

照明 荻野信也

音声 小関孝 猿田茂一

映像技術 堀江隆行

美術 室岡康弘

音響効果 三瓶智秋

編集 森本光則

取材 釜口佳人

ディレクター 渡辺考

制作統括 塩田純

他の出演者

大西美智子······妻
大西赤人······長男・小説家
岩田和博······プロデューサー
荒井晴彦······脚本家
堺谷博······戦友
阿部和重······小説家

*1:

*2: