『週刊新潮』3月13日号「へそまがり世間論」第584回/「大学生4割「読書時間ゼロ」の衝撃」
かつて私のゼミナールに所属していたA君という学生さんがいました。
A君は、生協での書籍割引制度を活用して──生協では一割引きで書籍が買えるのです──かなりの本を買っていましたね。
いつの間にか生協には、A君が取り置きしている本を入れるための箱が作られ、A君は懐が温かくなると、箱から本を何冊かサルベージしていくのです。
このささやかで床しい振る舞いは、なんとも気持がよく、書籍に対する愛情が、ひしひしと伝わってくるものでした。
A君は、卒業後、神保町の老舗出版社に就職しました。
この「A君」は青土社の編集者である明石陽介(1986年神奈川県生まれ)であろう。