⑬『小ブル急進主義批評宣言』

  • 絓秀実『小ブル急進主義批評宣言』四谷ラウンド、1999年1月8日 第1刷発行)
    ブックデザイン◎佐伯通昭/写真◎伊東和則

(Ⅰ)文学論・状況論

われわれは、いかにして小ブル急進主義者となるか*1

  • 革命家としての知識人
  • 相対的な無責任の横溢
  • アンチ・エディプスとは誰か


「純文学」をもこえて*2

  • 芥川賞の五十年
  • 大衆と〈非知〉
  • 弱者の光学


現代小説の布置──永山則夫問題』の視角から*3

  • メディア状況の今日
  • 新聞記者とスキャンダリズム
  • 文芸評論家の「役割」
  • 描写・換喩・強度


井戸さんのこと──「現代小説の布置」補遺*4


「喪失」の自明性──フェミニズムと文学*5

  • バブル崩壊以降
  • 女というイロニー
  • 鏡を否認する「女」


「メディア」が透明でなくなった時──ナショナリズムとジャーナリズム*6

  • メディア論の通俗化
  • 剥奪されたメディアの透明さ
  • 津村喬の歴史的意義
  • 不可分な関係にあるメディア論と差別論
  • アナクロニズムに陥ったメディア


その「許し」に安堵するのは誰か──加藤典洋敗戦後論』批判*7

  • 「ねじれ」たパフォーマンス
  • インターネット的な「われわれ」
  • 「許し」は不可能である


(Ⅱ)作家論・思想家論

性の隠喩、その拒絶──中上健次の『紀州』以降*8

  • 「半島」という現実
  • 第三人称への破棄へ
  • 部落民に「なる」こと


物語の重力の中で小説は如何にして生息するのか──中上健次『重力の都』を読む*9

  • 夜と水の、盲目の叙法


異化するノイズ──中上健次『奇蹟』を読む*10

  • ミニマリズムとノンフィクション
  • 様々なタイチ
  • 破棄される「一」


村上龍論──ボヘミアンからパルチザン*11

  • 或る方向転換
  • 新人であり続けること
  • 多言語性という「寓話」
  • 方法としてのパルチザン


井上ひさし天皇制──『紙屋町さくらホテル』をめぐって*12

  • 三島・大江以降の七〇年代作家として
  • 捏造される演劇史
  • 責任を回避しうる「非=人間」


小説を書かない小説家──作家ビートたけしの諸問題*13

  • 中上・永山・たけし
  • アンチ・オイディプス
  • 自ら語りえない「教祖」


ゾンビたちの永遠の「青春」──埴谷雄高を読むために*14


丸山真男という「呪物」──「戦後」を回避した戦後思想の首領マイスター*15


(Ⅲ)文藝時評

「(最後の)小説」は冷戦後をどう生きるか──サリン-オウム」事件と大江健三郎『燃えあがる緑の木』*16


ノイズは「生」を迷宮と化す──大西巨人『迷宮』*17

  • オウムというエンターテイメント
  • ドキュメンタリーの「語り」
  • 戦後五十年の中上健次······


「女性作家」になる──金井美恵子『恋愛太平記*18

  • 本文校訂の諸問題
  • 文学者となる法
  • 「かあいそう」ということ


小説にとって「歴史」とはなにか──船戸与一蝦夷地別件』*19

  • 「原罪」と疚しさ
  • 「無責任」の爽快さ
  • 美学化による救済


私が「それ」である──村上春樹ねじまき鳥クロニクル*20


マイノリティーに「なる」こと──中上健次発言集成』*21

  • 偽史」への膨張
  • 似ている/似ていない
  • 「歴史」への抵抗


「物質」としての小説を読む──島田雅彦『忘れられた帝国』*22


享楽と脱魔術化──見沢知廉天皇ごっこ*23


クイアーな「快楽」を求めて──日本的美学とフーコー*24

  • 「おたく」をめぐる論争
  • フィスト・ファック
  • 女は存在しない


探偵小説は変貌する!?──奥泉光『「吾輩は猫である」殺人事件』*25

  • 「殺人事件」というタイトル
  • スケープゴートを指定する
  • ハードボイルドでもなく······


「国民作家」没後のアイロニー──司馬遼太郎の死*26


「あとがき」にかえて
小ブル急進主義批評とはなにか──その起源と現在*27

  • 一九六八年の革命
  • カウンター・カルチャーの「反復」
  • 疎外論の回帰と「欲望」


初出一覧*28


「本書は、私がここ十年ほどのあいだ、その時々のジャーナリズムの要請によって書いてきた文芸批評のうち、今なおそれなりに読むに耐えると思われるものをまとめた。「読むに耐える」とは、小ブル急進主義批評として、という意味である。」「本書の編集については、堀内恭氏の懇切な配慮を得た。」


『小ブル急進主義批評宣言』書評

*1:『木野評論 VOL29』(98年3月号)

*2:『季刊思潮 NO4』(89年4月号)

*3:『群像』(90年8月号)

*4:『文藝』(97年冬号)、『文藝別冊 完全特集 永山則夫』(1998年、河出書房新社)および『文藝別冊 総特集 永山則夫〈増補新版〉』(2013年、河出書房新社)に再録

*5:『群像』(92年10月号)

*6:アステイオン NO46』(97年秋号)

*7:早稲田文学』(98年3月号)

*8:文學界』(96年3月号)

*9:『新潮』(88年11月号)

*10:文學界』(89年6月号)

*11:文學界』(96年11月号)

*12:『演劇誌キマイラ』(98年11月号)

*13:ユリイカ』(98年2月臨時増刊号)

*14:『文藝』(97年夏号)

*15:文學界』(97年3月号)

*16:野性時代』(95年6月号)

*17:野性時代』(95年7月号)

*18:野性時代』(95年8月号)

*19:野性時代』(95年9月号)

*20:野性時代』(95年10月号)

*21:野性時代』(95年11月号)

*22:野性時代』(95年12月号)

*23:野性時代』(96年1月号)

*24:野性時代』(96年2月号)

*25:野性時代』(96年3月号)

*26:野性時代』(96年4月号)

*27:書き下ろし

*28:(※既出作品は一部改題の上、加筆しております)